YKArchitects

伊川谷の家

2021

所在地 | 神戸市
用途 | 専用住宅
構造 | 木造
規模 | 2階建
設計/監理 | YKArchitects
構造設計 | 萬田隆構造設計事務所
施工 | ビームスコンストラクション
写真 | ポーラーデザイン

敷地は、近くに国宝の寺院があるおかげで開発の手が及ばない地域の近くにあった。元々は農村の風景が広がり、豊かな自然の中にあったが、30年前地下鉄が通りその駅周辺の一部地域のみ開発が許可され区画整理の後整備された地域の一区画に存在する。20年ほど前には、田園が広がり農家住宅が点在する、ご近所さんと顔を合わせれば気軽に挨拶をし会話をする関係性を持つ地域だったが、今はその駅周辺のみ区画整理及び造成が行われ無差別的にマンションや戸建てが建築され顔見知りでない住民が増えている。もともとそんな農家住宅で近隣と密な関係性の中で子供のころを過ごしたクライアントが、換地によって割り当てられた敷地の中で、プライバシーを確保しながらも、いかに当時のような周囲の環境(人々)と繋がりながら、豊かに生活できる環境を作れるかという事を考えながら設計を進めた。農家住宅では、家の手前と奥で他人を許容するレベルが変化する。これは広い敷地の中で物理的な距離を長くとることができた場合有効だが、それと同じ効果をコアとその他の空間に分断することでを生み出す計画とした。個室やプライベートな空間を4つのコアに入れ込み、それ以外の空間をパブリックな場と捉えることで、農家住宅の土間や広縁、軒先のような手前の設えを家の中に挿入し、他人であっても境界を感じにくい地続きの開放的な空間を設けた。住人のプライバシーは確保しながらも、他人に対して門戸を広げる農家住宅における奥と手前を内包する寛容な空間を持つ住宅となることを目指した。